マイグレーションとは?レガシーシステムを使い続ける脅威とともに解説

マイグレーション

2018年秋、経済産業省が発表したDXレポートにて指摘された「2025年の崖」。それは企業が、複雑化・ブラックボックス化した既存システム(以下、レガシーシステム)をそのまま使用し続けた場合、システムの保守・運用に大きなコストがかかり、競合他社に淘汰されてしまうという辛辣なストーリーでした。
2025年まであと5年。企業による先端テクノロジーを活用したDXは、すでに多くの企業で実施されています。いまだに手をつけず様子を伺っている企業は、迅速にDXに向け取り組むべきでしょう。では、どこからスタートするべきか。さまざまなDXプロセスのシナリオがありますが、今回はその基盤となる「システムのマイグレーション」について解説します。

マイグレーションとは、「移行」を意味する言葉です。本記事では、レガシーシステムから新システムへの移行をどのように進めればよいのか。そのメリットや必要性、モダナイゼーションやリプレイスとの違いなどについて解説します。
マイグレーションへの理解が、貴社にとってDX実現への足がかりとなれば幸いです。

マイグレーションとは? 種類やモダナイゼーションとの違い

マイグレーションとは、ソフトウェアやハードウェアシステム、およびそのデータなどを別の環境に移転したり、新環境に切り替えたりすることを示します。現行システムの要件は変更せず、システムを新しくする取り組みです。
パッチ適用のような部分的な修正や実装ではなく、基盤そのものを刷新するイメージと捉えてください。いわばシステムのリノベーションです。

レガシーマイグレーションとは

多くの場合、マイグレーションは「レガシーマイグレーション」を指すことが一般的です。
レガシーとは、本来「資産」や「代々受け継いできたもの」という意味があります。もともとは悪い意味ではありませんが、情報システム用語で「レガシーシステム」と使う場合は「古くなった時代遅れのシステム」という否定的な意味になります。技術革新による代替技術が広く普及した段階で、旧来の技術基盤により構築されているシステムを指します。
レガシーシステムと聞くと、メインフレームで構築された基幹システムをイメージする向きもありますが、今やオープン系基幹システムの一部もレガシーシステムになりつつあります。
2000年代に構築したWebベースの基幹システムを、現在に至るまで改修を繰り返しながら利用しているケースは珍しくありません。これらのシステムでさえ今や15年~20年が経過しており、レガシーシステムと呼ばれます。
レガシーマイグレーションとは、レガシー化(老朽化、複雑化、ブラックボックス化)した既存のシステムを新しいシステムに移行することです。
レガシーマイグレーションには、大きく分けて3種類の手法があります。

リホスト リライト リビルド
概要 現行のプログラムをそのまま新規基盤へ移行する方法 現行のプログラムをもとに新しい言語で書き直す方法 現行の要件をもとに、言語やプログラムなどシステム全体を再構築する方法
レガシー解消度
設計 基盤変更に伴う変更 プログラム言語およびプラットフォーム変更に伴う変更 再設計
プログラム 変更なし
(基盤変更に伴う変更)
再生成
(プログラム言語変更、
ロジックは変更しない)
再作成
(プログラム言語変更、
ロジックの見直し)
基盤 再構築 再構築 再構築

<表:レガシーマイグレーション3種類の手法と特長>
表の通り、システムの刷新対象が多いほどレガシー状態の解消度が高いことがわかります。レガシーからの脱却には、リビルドが最適な手法といえますが、刷新対象が多い分、コストやリスクが高くなります。
また、レガシーマイグレーションは、業務の効率化や改善には直接的な影響がないため、経営層の理解を得るのは困難です。どの手法を選定するかは、現状のシステム全体像を把握した上で検討する必要があります。

モダナイゼーションやリプレイスとの違いは?

よく、システム更改の表現として「モダナイゼーション」や「リプレイス」といったものがありますが、それらとマイグレーションは何が違うのでしょうか。以下でご説明します。

モダナイゼーションとは

現代化や近代化などと訳される「モダナイゼーション」は、先述のレガシーマイグレーションの発展型とも言えるものです。
システムの仕様や要件定義は現行のものをそのまま活用することで、これまでのソフトウェア資産による安定性を維持しつつ、かつ新ハードウェアへの移行により、新技術への拡張性を持たせることができます。
レガシーマイグレーションは、モダナイゼーションを実現するための手段といえます。

リプレイスとは

システム改修やマイグレーションは、ビジネスニーズの変化に対応し切れなくなったとき、システム全体を再構築やパッケージ導入などにより、全く新しいものに置き換えることを目的とします。
一方リプレイスとは、業務要件定義からやり直すアプローチのことです。これまでのシステム仕様やソフトウェア資産を活用せず、業務を見直して、新たなシステムに入れ替えます。

マイグレーションを進めなければならない理由

では、なぜ今このタイミングでマイグレーションを進める必要があるのでしょうか。そこには、先述した「2025年の崖」問題の存在があります。

老朽化、複雑化、そしてブラックボックス化

そもそもシステムは、完成した直後から陳腐化が始まるものです。そしてその過程で、以下のような典型的な課題が積み重なっていきます。

  • 技術の老朽化
  • パッチ適用などによるシステムの複雑化
  • 運用を含めたシステム全体のブラックボックス化

特に最も大きな問題は、ブラックボックス化です。レガシーシステムは、その大半が階層化された組織ごとに構築されているため、全社横断的なデータ活用が困難となります。また、過剰なカスタマイズ設計を前提に組まれていることから、非常に複雑化している傾向が強いのです。
結果として、どんな機能がどういった意図で実装されているのか、誰も正確に把握していないという、ブラックボックス化が進んでしまっています。

最大で年間12兆円にも上る経済損失

前項のブラックスボックス化を認識しつつも、レガシーシステムを運用し続けている企業は多いことでしょう。経営者が構造的なDXを望んでいたとしても、現場レベルでの抵抗が大きいため、なかなか抜本的な改革を進めることができません。
結果として、DXが実現できないだけではなく、経産省がDXレポートで指摘したように、2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる危険性を招くのです。これが「2025年の崖」と呼ばれている所以です。
企業にとっては、爆発的に増加するデータを活用しきれずにデジタル競争の敗者になるばかりか、多くの技術的負債を抱えることで業務基盤そのものの維持・継承が困難になります。さらには、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルや、データ流出などのリスクも高まるのです。
そして、システムの維持管理費だけは高額化し、やがてIT予算の9割以上を占めることが想定されています。だからこそ現時点で、まずはレガシー化したシステムを、ビジネス環境変化や技術進歩などに対応できるインフラ基盤へとマイグレーションすることが、構造的なDXに向けたファーストステップになりえるのです。

マイグレーションを進めるメリット

それでは、マイグレーションを進めることで得られる具体的なメリットは何なのでしょうか。企業は、「コスト削減」、「現行システムの有効活用」、「新規技術の導入が容易にできる」など、3つの恩恵を得ることができます。

コスト削減

まずはなんといっても、システム運用にかかるコストを削減できる点が、大きなメリットと言えます。
システムが老朽化すると、場合によってはメーカーによるサポートが終了し、結果として自社で保守・運用を行う必要があります。また、複雑化・ブラックボックス化が進むと、日々の運用コストが増大するだけでなく、次の担当者が不在となってしまうセカンドジェネレーション問題も発生します。システムの全容を理解する人がいないため、致命的なトラブルが発生しうる状況とも言えます。
その点、クラウドや共通プラットフォームを活用する形で、レガシーシステムをオープン化するマイグレーションを進めることで、保守・運用のコストは大幅にカットでき、上述のセカンドジェネレーション問題も発生しにくい環境を構築できます。

現行システムの有効活用

長い年月をかけて投資してきた各ソフトウェアの機能性を無駄にせず、新システムとともに必要な部分だけを移行できる点が、マイグレーションの特長です。
これまでのシステム投資をサンクコストとして切り捨てるのではなく、引き続き蓄積・活用できる点が、企業にとって非常に大きなメリットだと言えるでしょう。

新技術の導入が容易にできる

マイグレーションを実施し、システムがオープン化することで、新技術の導入も容易になります。
クラウド、AI、モバイル、IoTなど、現在の技術トレンドは連携と分散です。オンプレミスを前提にしたシステムアーキテクチャでは自ずと対応の限界がありますが、マイグレーションを実施することで、より市場の動きに合わせた柔軟な対応が可能になります。

マイグレーションの注意点と課題

一方でマイグレーションを進める際には、注意点と課題もあります。

対象資産の選定と「見える化」

マイグレーションを成功させるためには、現行の資産をしっかりと「見える化」することが必須です。どんな機能がどこに実装され、どんな運用がなされているのか。各ビルディング・ブロック間のインターフェースはどうなっているのか。システムに関わる技術はもとより、現場や人、データなど、あらゆるシステム資産の全体像を一目でわかるように棚卸しすることが、非常に大切なプロセスとなります。
これを行わないと、マイグレーションのROIが低下するだけでなく、中長期的な保守・運用コストが増大してしまいます。
現行システムの全体像を把握し、そのメリット・デメリットを理解して初めて、どの機能を残し、どんな機能を追加して、将来的にどんな機能が必要になりそうかの設計が可能となります。

IT人材の不足

もう一つの課題はIT人材の不足です。ここでいうIT人材とは、単純に言われた仕様に沿ったコーディングができる人材ではなく、対象技術への深い理解とリーダーシップ、およびビジネス戦略思考を併せもったプロジェクトマネジャーのことを示します。
特にマイグレーションプロジェクトを進める場合、元のシステム言語と新しいシステム言語、それぞれの知見を有した人材が必要となるため、早い段階からの人材育成や採用ブランディングが必要となります。

ヒト・モノをトータルで捉えた視点で進めることが大切

以上がマイグレーションの解説となりますが、いかがでしたか?「DXなんて大企業が考えること」と思っていた方が多いかもしれませんが、実はすべての事業会社が当事者意識を持つべきテーマだということが、お分りいただけたのではないでしょうか。
最後に記した通り、マイグレーション成功のポイントは、現行システムの見える化と人材確保です。ヒト・モノをトータルで捉えた視点で進めることが、DX推進の要となります。
また、今回はマイグレーションの基本的な内容をご紹介しましたが、今後「レガシーマイグレーション」、「リホストマイグレーション」にフォーカスした記事を近日公開予定です。

シーイーシーでは、企業のマイグレーションをワンストップで支援するソリューションを提供しておりますので、DXでお困りの際は気軽にお問い合わせください。

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